2017年3月19日日曜日

ケースファン選定の基本

今回ケースファンを選定するにあたって、調べた内容をまとめて自己流の選定方法として残しておきます。

手順は以下となります。
1.PCの発熱量を求める
2.求めた発熱量に見合う風量を計算から求める
3.計算で求めた風量を満たすファンを排気用として選定する
4.求めた排気風量より正圧となるようなファンを吸気ファンとして選定する

前提

・個々のファンは吸込み吐出し抵抗による損失で風量が落ちる
・静圧が高いものは風量の落ち方が少ない
・ファンを複数を並列駆動すると風量はそれぞれの合計になる
・同じファンを直列駆動すると風量は変わらず静圧が上がる
・回転数と風量は比例する
・ケース内は正圧となるように吸気/排気のバランスを考える

各ファンの予想風量算出

・最大回転数時の損失を含む基準効率を勘で決める
・最大回転数に基準効率と回転率(回転数を絞った場合)を掛ける

例:
定格: 1500rpm、60CFM
基準効率: 80%

100%回転数時の風量
60CFM×0.8=48 (CFM)

80%回転数時の風量
60CFM×0.8×0.8=38.4 (CFM)

1.PCの発熱量を求める

PCの発熱量≒消費電力なので、ワットモニターで直接測るか、主要パーツの消費電力等からの想定で求める。
①ワットモニターの場合
直接測った電力値=発熱量とする。

②想定の場合 ネット上にある電源容量計算などを利用し、パーツ構成から消費電力を予想する。
消費電力の予想ができたら、使用する電源ユニットの効率から損失分を計算し、それを発熱量として加算する。

トータル発熱量は下式で表せる。
Wcal=Wuse+Wuse×(1-η)=Wuse×(2ーη)

Wcal : トータル発熱量(W)
Wps : 電源ユニット容量(W)
η : 電源ユニット変換効率(%)
Wuse : 消費電力(W)

この時のηは電源ユニット容量の負荷率により異なる。
80PLUSであれば、規定されているのでその値を使用する。

80PLUSについては80 PLUS - ウィキペディアに詳しい。
メーカーの仕様表に詳しいグラフが載っている場合もある。

例:
予想電力Wuse: 300W
電源ユニット容量Wps: 600W (80PLUS GOLD)

このときの負荷率は概略で300÷600=0.5 (50%)
80PLUS GOLDの50%負荷時変換効率は90%なので損失は100ー90=10 (%)となる。
よって損失による消費電力(=発熱量)は300×0.1=30 (W)となり、合計の発熱量は330Wとなる。

2.求めた発熱量に見合う風量を計算から求める

冷却に必要な風量は下記計算式で求める。
Q=W÷(ρ×C×⊿T)

Q : 必要風量(m3/s)
W : 発熱量(W)
ρ : 空気の比重量(kg/m2)
C : 空気の比熱(J/kg℃)
⊿T : 空気の温度上昇(℃)

ここで25℃のとき、ρ×C=1200、温度上昇を10℃とすると
Q=W÷12000 (m3/s)    日本電産サーボ 技術解説より

流量単位をケースファンでよく使うCFMとした場合、
1m3/h=0.589CFMより、
Q=W÷12000×3600×0.589=W×0.1767 (CFM) 

例:
1.で求めた発熱量を式に当てはめてみると、
Q=330×0.1767=58.311 (CFM)

3.計算で求めた風量を満たすファンを排気用として選定する

排気風量が2.で求めた必要風量以上となるものを選定する。

ファンの風量を求める式は下記
Qfan=Qmax×E×R

Qfan : ファン風量(CFM)
Qmax : ファン定格最大風量(CFM)
E : 基準効率
R : 回転率(%)

一般的なリアに1つ排気ファンをもつケースを使用した例で考えてみると、排気ファンの吸込み側には十分なスペースがあり、またケース内は正圧に保つことを前提としているので吸込み側損失はないと考えられる。
吐出し側は粗いメッシュやファンガード程度の抵抗が損失分として考えらる。
このあたりの条件から損失分はほとんどないと考えられるので基準効率としては95%としている。

定格:1500rpm、60CFMのファンを選定したとして、必要風量(2.項で求めた58.311CFM)をファン風量として式にあてはめると
58.311=60×0.95×R
ここから
R=102.3 (%)

回転率Rが100%を超えていることからファンでは風量不足であり、より風量の大きいファンを選定する必要なことがわかる。

定格:2000rpm、85CFMのファンを選定した場合
58.311=85×0.95×R
ここから
R=72.2 (%)

72%程度の回転数(約1450rpm)で必要風量を満たすことになる。

4.求めた排気風量より正圧となるようなファンを吸気ファンとして選定する

正圧とするための吸気風量は排気風量の120%(できれば150%)以上として考える。

2.の例で求めた排気風量から120%を求めると、
58.311×1.2=69.97 (CFM)
約70CFM(以上)必要となる。

ここではフロントに吸気ファンが2台あるケースを使用していると仮定する。
簡略のため、2台のファンは同一のものとする。
(異なるタイプのファン、回転数で使用する場合はファン毎に風量を計算し、それぞれを合計して計算する必要がある。)
一般的に吸気ファンは排気ファンと違い吸込み側にはファンフィルターがあり、吐出し側もすぐにHDD等が取り付けてあったりでかなりの抵抗損失がある。
このあたりの条件からそこそこの損失を考慮し、基準効率を50%とする。

ファン風量を求める式は排気と同じだが、今回は2台での計算となるので1台分の計算を2倍している。
Qfan=Qmax×E×R×2

Qfan : ファン風量(CFM)
Qmax : ファン定格最大風量(CFM)
E : 基準効率
R : 回転率(%)

定格:1500rpm、60CFMのファンを選定したとして、必要風量(必要排気風量の120%)をファン風量として式にあてはめると
70=60×0.5×R×2
ここから
R=116.7 (%)

回転率Rが100%を超えていることからファンでは風量不足であり、より風量の大きいファンを選定する必要なことがわかる。

定格:2000rpm、85CFMのファンを選定した場合
70=85×0.5×R×2
ここから
R=82.4 (%)

82%程度の回転数(約1650rpm)で必要風量を満たすことになる。


ここまでで、一通りの基本は終わり。

実際には1~4についてアイドル時と高負荷時それぞれに計算し、どちらの場合でも吸排気のバランスが取れるような 選定/回転数設定を見つけてそれをファンコンに設定することになります。

基準効率は経験的な勘で決めているため、それ以降の計算値は数値的にはまったく信憑性のないものになってしまっているのですが、 それでも予想値として一定の基準にはなると思っています。
自分の基準としては排気は95%、吸気は50%を基準で選定するファンの静圧の大小から±する感じにしています。

一通り条件を満たすファンの組み合わせを見つけたら、次にどの組み合わせが一番静音になるかなどを考えて、いろいろなファンを調べまくって出した結果はかなり満足感が得られるのではないかと思います。





0 件のコメント:

コメントを投稿